No.7 次の世代につないでいく栗農家

更新日:2023年08月30日

栗剪定技術認定制度の名人剪定士や岐阜県飛騨美濃特産名人の土屋厚子さん。
栗農家として栗の栽培を行うほかに、剪定の講師や栗女性部での活動などに楽しみながら取り組んでいる土屋さんにお聞きした内容を聞き書き風にまとめました。

土屋厚子さん
  • プロフィール

土屋厚子といいます。ここへ嫁いで47、8年くらいになるのかな。主人の父が倒れて、養蚕ができなくなったんで、その空いた桑畑をどうしようっていうことで栗を植えたのがもう40年近く前になるので、その時から栗に関わってます。

  • 栗栽培の1年のスケジュール

栗を拾っちゃってから1年が始まります。10月に栗を拾い終わったらお礼肥をやる。肥料は年に3回やるんですよ。春の剪定の終わった後に1回、基本の肥をやって。6月に追肥をやって、実がなった後にはお礼の肥をやる。そうすると今度は、葉っぱを全部焼くんですよ。灰はいかんとかっていう人もいるんだけど、葉っぱがすっごい量落ちるんですよ。とりあえず道くろだけちょっと網を張っておいて。葉っぱが全部落ちた12月になってから、葉っぱをちょっとずつ寄せながら全部焼いて片付ける。葉っぱが落ちてからでないと仕事がしにくいので年明けからしか剪定できないんですよ。その後に、剪定が済んだら、肥料をやってちょっと一段落。7月、8月ぐらいに消毒をして、そうするともう栗が落ちだすんで拾って、出荷終わって、その間に草刈りをしながら。
 

立派な栗の木
  • 栗の栽培を始めたきっかけ

この家に嫁いできた時には、主人の父が病気で寝たきりになっていて。主人の母が1人で百姓をやってました。主人は勤めに出てたんですが、元々この家は専業の百姓なんです。でも、私たち夫婦は職場結婚で二人とも勤めていて、将来は年金いただいて、悠々自適な生活をする予定だったのが(笑)。主人が勤めだったし、私が栗の話を聞きに行かないと仕事ができなかった。栗の木を植えたのは母なんですけど母は車に乗れないんで、最初のうち乗せて行ったりしてたのが、結局私が行った方が早くなる。で、「あんた行っといて。」ぐらいになって、私が勤めを辞めてて、栗の世話を引き継いだっていう感じです。

  • 栗の剪定は一番楽しい!

栗の木は全部で、1反40本植えになってるんで5反で200本あります。
剪定っていうのは、良い実をつかせるための基本的な作業で、冬と夏にやるんですよ。最初はとにかく素直に育てて、ある程度成長して大きくなったら芯をとって、それがまた枝が開いてくんで次は横をとって。剪定の仕方も、その植えたばっかりの木と5年、6年ぐらい経つ木、その後の木、もっと古くなった木っていうのは違う。古い木だと、去年の枝を切って新しく生えた枝に替えていくのだけど、なかなか習った通りにはならない。全部枝の出てくるところが違うし、木によってどうやってやろうとかって思いながら。木を眺めるってのが一番剪定の基本なんで。切る前に全部眺めて、ここをどうしようああしようっていうふうにやるのが基本なんですよ。剪定方法は、同じことをみんな習うんだけど、やっぱり人によってくせがあります。
冬の剪定には1月から3月の中頃までかかります。朝から晩まで毎日つきっきりでやってればそんなにかからないんだけど。あちこち他のことをやりながら。なので時間がかかる。もう終わったの?とか、3月なると周りに聞かれるので私がいつも最後ぐらいかな。
私は剪定が一番楽しいんですよ。みんな栗を拾う作業が楽しいって言われることはあるんだけど。主人に実を作っとんのか、木を作っとんのかどっちだとかって言われる(笑)。木です(笑)。
なかなか習ったとおりにならない、木がもう全部違うので。木によって全部出てくるところも違うし、どうやってやろうとか思いながら。楽しいですよ。
 

立派な栗
  • たくさん栗を取りたい

栗の落ちる時期によって早生(わせ)、中生(なかて)、晩生(おくて)の品種があるんです。この間からずっと日照りでしたよね。雨が少ないと早生はいつも実が小さくなる。ここは赤土なので乾き続きで本当に地面が割れてしまうぐらいになってて。雨が降らない年とかだと、栗の実りが良くないこともあります。雨が欲しいんだけど、台風で風が吹くと今度は実が落ちてしまうんで難しいです。いつもはこれから先、ちょこちょこ雨が降ってくるんで。そうすると晩生は割と実りが良いんですよ。枝を剪定するだけでは、絶対良い実ができるっていう保証はない。でも、最低限のできることだけはしておかないといけないんで。
中津は栗が少ない。農家の数があっても、面積が少ない。茨城とか熊本、宮崎とか栗の産地があって、茨城とかはもう1人で何町歩も持ってるっていうところはあるんだけど。
うちでは5反でこの辺だと平均5反ぐらいかな。だから少ない面積で収量を上げるっていう技術でやってます。去年、栗の全国大会で茨城だと、一反200キロぐらいとかって言ってたんですけど。去年うちでは一反400キロちょっと採れてその前の年が350キロ。その前の年も400キロぐらいは採ってるんで。少ない面積でも何とか取れとるような。でも毎年のなり物ってたくさんなる年と裏年ってあるんだけど、それをなるべく平均的に採れる様にっていう技術で。お天気相手なのでなかなか思い通りにはいかない。今年採れなかったらまた来年頑張ろうっていう風でやっていく。
 

土屋厚子さん
  • お菓子作りも、手仕事も。女性部のチカラ

栗農家には栗がいっぱいあるんですよ。出荷しない規格外の栗も出来るんで。皮がおかしいとか、見た目で売りに出せるのかより分ける。規格外でも皮をむいたら全然大丈夫ってのも結構あるのでそういうのを使って、栗のお菓子を作ったりとか。栗が採れたらそれを商品にしないと。でも栗って、他の果物みたいにむいたら食べれるっていうものじゃないのでなかなか大変かなって。よっぽど好きな人でないと、栗もらってもお菓子とかを作るっていうとこまではいかないかなっていうのはあるんで、そこら辺がちょっと課題。
栗の女性部を20年ぐらい前に立ち上げました。ご主人が亡くなられて、どうしても自分がやらないとっていう人とかもいて。でもみんな自分も栽培をやってるからいっぱい話も出るし、栗女性部の活動が楽しいっていうことで結構大勢参加してもらって。メインは女の人だけの剪定講習会。さあ、先立ってやろうっていう人はなかなか男の人の前ではないんで、女の人だけでやりましょうって。誰かやらないとね、増えていかないですから。立ち上げてから毎年剪定講習はやってるんですよ。でも始めたときには大勢みえたのが、それから20年経つと年齢も上がるし、病気になるとかでね。栗自体、ご主人がやらなくなったからもう辞めるっていう方もあるし。もう今さっと活動できるのがちょうど私たちの年代。5~6人かな。何かやるっていうとき、そこを中心にやって新しい人、若い人もちょっと代替わりしたいようなところ、少しずつ拾い出していこうかなっていう。
私たちは焼肉のたれというか万能だれっていうのを、農協の女性部でやってるんですよ毎年講座で作ります。9月は栗拾わないといけないんで。百姓用の腰かご作りたいっていう意見も出ました。かごって今、クラフトかごってペーパーのがあるけど、百姓なんで、ちゃんと手の切れるような固いポリプロピレンの荷造りヒモ。結構持ってる人がいるんで、洗っても大丈夫だし、百姓には必需品なんで。それを計画しないかんな。楽しいね。栗だけやるんじゃなくて女の人だとそういう楽しみもある。仲良くなっていけばまたその本業の栗の時にいろいろ聞いたりもできるっていうので、そういう効果で良くなってくのかなっていうのはあって。そういう同じことをやってて色々教えてくれる仲間もいるんで、東美濃の栗の人はありがたいし、楽しいですね。
 

栗畑
  • 中津川の栗畑を次の世代に

剪定を教えるっていうのは、個人的に聞かれるときもあるし、県の普及事業で、栗の基本技術講習会ってのが毎年1月にあるんですよ。その時に講師として頼まれたりします。
教える相手は、これから栗をやろうっていう人なんで、若い人もあれば、定年を過ぎた人も。栗って割と定年なってから始める人も多いんですよ。自分のところに栗があるからやるとか。50歳ぐらいから植えておいて60歳になったらしっかり拾おうって人も。だから、習いに来る人は年代は色々です。
農業をやるっていう人は少なくて、親が亡くなったから仕方なくやるっていうところも結構多い。こんなに楽しいのに。東美濃栗振興協議会の中で、家庭内の後継者が少ないんです。なので全然栗の農家じゃなくて、他のとこから栗をやりたいっていう人に畑の空いてるところを貸すっていう園地のマッチングをするっていうこともやってる。とにかく園地を守りたいってそういう活動をやってる。借りたい人には若い人の方が多いですね。全然、自分のところに栗はないんだけど、興味持ってやりたいとかって人もある。でもねそうやって若い人もね、そんな興味を持つ人があると嬉しい。

栗の木と土屋厚子さん
  • これから

やっぱり、栗きんとんすごい有名で、地元の栗全然使ってないなんて言われても、癪やし。
これからやっぱり栗をやってくれる人が増えてほしい。栗きんとんの里とか言われながら栗がないっていうのはやっぱり寂しいんで、中津川は栗の産地っていうふうにもやっぱりしたいなっていうのがある。今の栗の量はなんとか維持して、何とか後を継いでいけるように。で、やっぱり栗きんとんとかの食文化も、習いたいって人があればそれもせっせと、出向いて、講習もしていきたいなっていうのは思ってます。
ここへ嫁に来たので、今があるって思う。ここへ来ずに勤めていたら今はないかなっていう。今の自分には満足してるんですよ。
 

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