No.6 仲間と追うヘボの魅力

更新日:2023年03月20日

「付知ブラックビークラブ」で約10年間会長をしているヘボとり名人の早川利廣さん。

中津川市などの東海地方の山間部の一部にはヘボ(クロスズメバチ)を食べる文化があり、付知では巣を育てて大きさを競うコンテストがあります。

早川さんは、家族で取材を受けてヘボを抜いたり蜂ご飯を食べたりする様子が描かれた本が全国の小学校中学年を対象とした作文の課題図書になったことや、テレビなどの取材を受けたこともあります。

そんなヘボの普及に情熱を注ぐ早川さんからお聞きした内容を聞き書き風にまとめました。

 

もう少し詳しい内容はこちらをご覧ください。(PDFファイル:814KB)

早川利廣さん
  • プロフィール

早川利廣です。73歳です。建具職です。自営業になってから50年近くになるかな。仕事も本当はやらんでもいいわけやけど、職人はそういうわけにいかん。頼まれりゃするという。体がまめなら仕事はできんことはない。

クロスズメバチ(ブラックビー)からつけた付知ブラックビークラブをもう10年近く会長職をやっとる。ヘボは親の姿を見ながら自分も飼うようになって、そうやな、30年ぐらいになるかな。

  • ヘボとは

クロスズメバチといって黒地に白い縞があって、体長は1センチちょっと位。アリと一緒で女系やね。働きバチも全部メスで、オスはほんとに子孫を残すだけの餌食い虫や。繭からかえってすぐの若いハチは外へは飛び出さず、まず巣の掃除とか給仕係。寿命は1カ月くらいしかないもんで給仕係が2週間くらい過ぎると初めて外へ行って昆虫とかを取ってくるわけやね。

沖縄から北海道までクロスズメバチはいるけど、食べる文化は長野県の一部と、岐阜県では恵那市の串原、中津川市付知とか愛知県の稲武の方。山間地のタンパク源として、結構前から食べとったんじゃないかな? 結局、山の中の人はそういうもんでタンパク源を補給したんや。

左がシダクロスズメバチ
  • 巣を大きく育てるのに適したハチ

里に巣くうやつと、山に巣くうやつとおる。クロスズメバチのなかでも種族があるわけやね。田んぼの畔にある巣は、僕んたはピンコロっていって、それは箱に入れては飼わんわねえ。大きくならんし、9月の終わりぐらいになると大体営巣を終了しちゃうもんで。山から捕ってきて大きくするシダクロスズメバチは、大体11月までは営巣をやるもんでさ。もう飛び方が違うわけよ。高いところを飛んでストンっと巣に落ちる。そのピンコロってやつは本当に草をくぐって歩くくらいの速さで巣のそば行ってジグザグに巣に入る。

  • ハチ追い

ヘボに餌を持たせ、綿で印をつけて飛ばすわけ。綿を目印に見えるとこまで順々に追ってったわけやね。最初のとこの人は餌を付ける専門。追ってく人は、順番に巣の方へ行く。昔は走ってぼったけど今は走らん。トランシーバーで順番に、尺取りのように延ばす。「行ったよ。」「もうそろそろ見えるころやぞ。」って言うと、待手が集中して、「あ~、来た来た。」っていうと、あぁ見えたんやなって。そのやりとりが面白いわけよ!巣を見つけると大喜びで、前ならさっそく缶ビールで乾杯!(笑)

 

巣は基本的に土の中で、かける場所は大体特定の場所。かけんところはいくら良いところでもかけてないし、こんなとこ!?ってとこも毎年かけるし。でもやっぱり雑木林のあるところの方がかけやすいね。どういうところでそれを見分けるか、知らんが秋になったら明るくなるところを選ぶね。

ハチを飼うための小屋
  • 巣が大きく育ちやすい環境

山で見つけてきて、最初は里で飼っておったけど条件が悪いもんで、今は山に小屋を作って飼ってるんです。民家からちょっと離れたとこやけど。

  • 刺される

昔は煙幕でハチを気絶させて取っとったけど今は防護服があるもんで生掘り。気を付けようったって、1年に10回どころじゃない刺されるで。山で刺され、世話しにいって刺され。まあ、アナフィラキシーは気をつけないかんけど。串原のヘボの巣の大きさを競う大会なんかは日本一危険なお祭りって毎回救急車が来とった。あそこは温泉もあるし人が多いのにヘボでブンブンやで。煙幕かけてもやっぱりすぐよみがえってくるもんで攻撃するやつは攻撃するわね。そら危険や。なるだけ刺されないようにっていっても、油断するとちゃんと刺される。アッハッハ。

手作りの箱
  • ヘボの育て方

最初の方の餌は鳥の肝とか胸肉。最終的に僕は普段自分たちの食卓に上がらんようなヒレ肉とか、ウズラの肉を毎日。販売するときに、「お前のとこで貰ったヘボは肝臭いぞ。」って言われちゃいややで。ハチは肝をずぅっ!と喜んで食べるし、関係なく最後まで餌として与える人もあるけど。

 

最初は鳥の心臓4分の1からはじめて、それをペロリと食べるようになったらどんどん食わしてくわけ。毎日肝1キロ、心臓1キロ。すごい金額。10月頃になると、大体1つの巣で1リットルくらいの砂糖水はぺろりと舐めちゃう。それが11個もあるとえらいことになるわけや。餌もヒレ肉一本じゃ足らんもんでさ。取り上げる寸前になると、とにかくうまいもんを食わせて餌代関係なしよ。餌が足らんと子を持ちだしちゃうもんで。それをさせんよう餌は余るように。

ヘボの佃煮
  • 食べ方は佃煮に

ピンセットで抜いてね。1時間で1人500グラムくらいしか抜けんな。巣の1枚半くらいや。食べ方は、僕は大体佃煮やね。その佃煮でまぜご飯をつくってもらうわけや。朴葉寿司で食べたりもするし。

今、喜ぶ人は少ない。「わ、珍しいな。」って食べるのはお年寄りだけ。若い人には大体敬遠される。

たくさんの賞状と早川さん
  • 付知ブラックビークラブのはじまり

平成の始めだったと思いますよ。その前も串原の大会へは箱で飼ったやつを持ってっとったんよ。串原では常勝軍団やった。よそのクラブの会場荒らし(笑)。結構ラジオ番組とかテレビとかが取材に来ましたよ。

ヘボとりの先進地の串原にならって付知でも大会をやろうということでヘボのクラブができまして。串原へみんなで技を盗みに行ったね。最初は10人くらいから始まってどんどん途中までは増えて、また減って、今また32~3人に増えてという状況ですけど。市のがんばるサポート事業の補助金をいただきながらさらに人数を増やしたり。

一番若い人で僕の子どもくらいやもんで50歳くらいかな。

今ではクラブには付知に限らず地元で飼ってるよその町の方も入ってますよ。七宗とか、美濃市の方でもクラブに入ってみえます。

コロナがまだ始まる前は付知でも付知峡の温泉で一間かりて、懇親会をやったよ。

クラブでハチ追い会をやった時はまだ巣に入れてない人はそこで欲しい人はもらって行けよっていう。20人くらい来たかな。美濃市からも飛んでござったで。

巣の断面図
  • 全国の愛好家たちとつながる

ヘボコンテストの時はヘボの入った朴葉寿司を昼食に出して、一杯飲んだり、飯食ったりしてよもやま話に花を咲かせて。最近はねコロナで集まれとらんのよ。

全国地蜂連合会というクラブもあって。その会も増えたり減ったりしてますけどね。高齢化しとるとこがまあネックやけど中には若い人も。他県から「どうしたらそんな大きい巣ができる?」ということで訪ねてきたり。色んな所に交流の源があってさ。

連合会の行事で、長野県の駒ケ岳、あるいは御岳の大滝村の方へ泊りがけでハチ追い体験して、あとは宴会して温泉に入りましょうというツアーを3年組んどるけどコロナでいっぺんも成功しとらんのよ。

今はねえ7キロいかんとなかなか優勝できないね。この時の優勝はまぐれやったな。(笑)ここ3年くらいはコロナで大会ができんもんでオンラインで、会場同士でつないでコンテストをやってます。やっぱり大会をやるとさ、地区内外からも参加して色んな話が聞けたり交流の場になるわけやで。

  • 注目の昆虫食 ヘボで海外ともつながる

数年前、アフリカから昆虫食文化を見学しに来たこともありました。アメリカからも来ましたよ。オランダで世界サミットをやったこともあります。そしたら串原が持ってったヘボは大人気やったそうです。

食料難になったときに安価な餌でタンパク質が取れるってのが昆虫食らしいけど、ヘボは安価やない。一番いいのは草とか残飯で育つということやもんでコオロギやね。

ヘボは山へ入って、自然のやつを取ってくればその労力だけやけど、それじゃ1日で何キロも取れんで。去年も山に取りに行ったけど、12、3個掘り起こして、1キロちょっと取れただけ。それも3人くらい行って。日当の出るようなもんじゃない。僕んたあは面白いで行くだけやでさ。

なかなかヘボっていうのは生業にはならんのよ。全くの趣味の領域で。ヘボは他の昆虫と違って餌代がかかりすぎて効率の悪い昆虫食なわけやね。ただ栄養価は高いとは思う。

早川利廣さん
  • 仲間とのハチ追いは本当に面白い!

6月の終わりから11月までずっと半年近く昆虫と格闘しながら触れあってそんなに金をかけずに1日中、朝から晩まで5、6人くらいのメンバーで山を飛び回れる。それとやっぱり自然の中で、弁当食ってもうまいしさ。一杯飲むときなんか、大風呂敷広げてしゃべるもんでさ、さらに面白い(笑)。とにかく半年間はそうやって非日常を楽しく過ごせるという。友達と山で遊んで、自分とこも飼って、大きさを競い合うっていうのは、なかなか面白いですよ。

今度、愛知県瀬戸市から2人ばか入会しそうやわ。こっちのヘボは大きょうなるみたいやで、仲間にしてくれって。2人連れでその人達も退職してみえるで65歳くらい。

会員はどんだけでも増やしたい、若い人増やしたいけど、なかなか若い人は食いついてこんのよ。こういう面白い遊びは体験してみんとわからんもんで、ぜひ体験してほしいね。

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