⦅中津川宿29⦆姫街道と中津川・落合宿
姫街道と呼ばれた中山道
中山道は江戸日本橋から京都三条大橋までを結ぶ六十九次、約534キロメートルの街道で、険しい碓氷峠や木曽路を通る山道でした。
それに比べ東海道は五十三次、約488キロメートルの街道で温暖な太平洋岸を通ります。しかし、徳川家康による街道の整備で東海道の大河川には橋を架けず、富士川、天竜川などを舟渡しとし大井川などは徒歩渡しとしました。江戸を守るという政治的意図があったからです。
中山道は険しい道でしたが、東海道のように天候の悪化による川留や、宮宿(名古屋市熱田区)~桑名宿(三重県桑名市)のような約4時間もかかる船旅もありませんでした。そのため、姫君輿入れをはじめ多くの女性が中山道を通ったことから姫街道と呼ばれることもありました。
姫君たちの輿入に多く利用された中山道
なぜ姫君たちの輿入れは、道も設備も悪い中山道を通られることが多かったのでしょうか。たしかに、東海道の方が設備もよく安全な気がします。
それは、東海道に静岡の由井からもう少し江戸寄りに薩埵(さった)峠 というところがあります。よく、結婚式の祝辞の中に「切る」とか「切れる」とか「去る」といった言葉は、忌み言葉だと言って使わないようにします。薩埵(さった)峠の『さった』が『去った』に通じることから、縁起悪いということもあったのではないでしょうか。真偽のほどは分かりません。
また、東海道は上述の通り川が多いので、川留めなどがあり、特に女性の旅は大変だったと思われます。だから、中山道を選んだとも考えられます。
治安の問題もあったと思われます。特に幕末には、尊皇派や攘夷派が飛び交う時代です。中山道の方がまだ安心できる状況ではなかったかと考えられております。
中津川宿を通られた姫君たち
中山道は、江戸へ輿入れする姫君の通行が多く、もっとも有名なのが十四代将軍 徳川家茂へ嫁いだ皇女和宮です。
ほかにも浅宮(伏見宮家の姫宮)、比宮(伏見宮家)、五十宮(閑院宮家)、楽宮(有栖川宮家)、登美宮(有栖川宮家)、有姫(鷹司家)、寿明君(一条家)、鋭姫(広幡家)など京都の宮家や公家の姫たちが将軍家や水戸徳川家などに輿入れするために通行しました。
中津川宿や落合宿の本陣に宿泊された姫君も多くおられました。
中津川宿本陣泊の姫君たち
比宮(なみのみや)
増子女王(ますこじょうおう)
正徳元(1711)年から享保18(1733)年
幼称は比宮、院号は證明院(しょうめいいん)。
江戸幕府第9代将軍徳川家重の将軍世子時代の御簾中(ごれんじゅう)。
伏見宮邦永親王の第四王女。
楽宮(さざのみや)
喬子女王(たかこじょおう)
寛政7(1795)年 から 天保11(1840)年
幼称は楽宮、院号は浄観院(じょうかんいん)。
江戸幕府第12代将軍・徳川家慶の正室(御台所)、第15代将軍・徳川慶喜の伯母。
有栖川宮織仁親王の第6王女、異母妹に吉子女王(登美宮、最後の征夷大将軍・徳川慶喜の母)。
寿明君(すめぎみ)
一条 秀子(いちじょう ひでこ)
文政8(1825)年 から 嘉永3(1850)年
初名は寿明君、院号は澄心院(ちょうしんいん)。
江戸幕府第13代将軍徳川家定がまだ家祥と名乗っていた世子時代に迎えた二人目の御簾中(正室)。
関白・一条忠良の十四女。
最初の御簾中・鷹司任子の死去を受け、翌嘉永2(1849)年に婚姻。、その半年余り後に死去。
二人の御簾中に相次いで先立たれた家定は後に、関白近衛忠煕の養女として薩摩藩から敬子(天璋院篤姫)を御台所に迎えている。
皇女 和宮(かずのみや)
和宮 親子内親王(かずのみや ちかこないしんのう)
弘化3(1846)年から明治10(1877)年
初名は和宮、親子(ちかこ)は内親王宣下に際して賜わった諱、院号は静寛院(せいかんいん)。
江戸幕府第14代将軍徳川家茂の正室(御台所)。
仁孝天皇の第8皇女、孝明天皇の異母妹。明治天皇の叔母にあたる。
落合宿本陣泊の姫君たち
登美宮(とみのみや)
吉子女王(よしこじょおう)
文化元(1804)年から明治26(1893)年
幼称は登美宮、院号は貞芳院。そして、徳川吉子、没後文明夫人と諡される。
水戸藩第9代藩主徳川斉昭の正室。第10代藩主徳川慶篤、最後の征夷大将軍徳川慶喜の母。
有栖川宮織仁親王の第12王女(末娘)。異母姉に喬子女王(楽宮、江戸幕府第12代将軍・徳川家慶正室)。
有姫(ありひめ)
鷹司 任子(たかつかさ あつこ)
文政6(1823)年 -から嘉永元(1848)年
初名は有姫、院号は天親院(てんしんいん)。
江戸幕府第13代将軍徳川家定がまだ家祥と名乗っていた世子時代に迎えた初めての御簾中(正室)。
関白鷹司政煕の二十三女で、兄の関白鷹司政通の養女として輿入れした。
中津川市中山道歴史資料館
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更新日:2022年11月22日