フェルグソン石―陶芸家・成瀬誠志の黄色釉薬

更新日:2023年08月29日

EA66NA1117 フェルグソン石

フェルグソン石 [EA66NA1117]
岐阜県中津川市苗木(岩須)

長径最大5mm程度

EA66NC0836 フェルグソン石

フェルグソン石 [EA66NC0836]
岐阜県中津川市高山 木積沢

長径最大6mm程度


いずれも砂鉱(漂砂鉱床)から産したフェルグソン石 [Fergusonite-(Y)] です。
もともとはペグマタイトに産する黒色の柱状結晶ですが、結晶面が磨滅して丸みを帯び、表面が白っぽくなっています。

かつては貴重な黄色釉薬ゆうやく(焼き物の絵付け用絵具)の原料として利用されました。発色には、成分中のニオブ(Nb)が関係していると考えられます。

陶芸家・成瀬誠志と黄色釉薬

成瀬誠志像

成瀬誠志像

成瀬誠志せいし(本名 和六:1845~1923)は、中津川市茄子川の生まれの陶芸家です。

東京で江戸薩摩と呼ばれる絵付け陶器の制作で名を上げますが、1886(明治19)年、郷里・茄子川に戻って「陶博園」という工房を開き、ここで数多くの作品を制作しました。

誠志は、陶作のみならず製法や陶土・釉薬等の研究にも熱心で、特に1894(明治27)年ころ、苗木産のフェルグソン石から創りだした黄色釉薬 は「誠志色」と呼ばれて賞賛されました。

成瀬誠志作 菊花紋菓子鉢

成瀬誠志作 菊花紋菓子鉢

菊の花を鮮やかな黄色釉薬で表現したふた付きの菓子鉢
直径約15cm 個人蔵


1899年の大日本窯業協会雑誌に、「アスカイ黄」と命名された黄色釉薬についての記事が掲載されています。1896(明治29)年に恵那郡高山(現・中津川市高山)産のフェルグソン石から黄色顔料を見出したというものですが、これも「誠志色」と同じものと考えられます。


参考図書

文献

  • 愛知峰子 (2008) 樋口一葉と万国博覧会―『うもれ木』と「陽明門」―. 中部大学人文学部研究論集, No.19, 224-216.
    書誌ID XC17100309
  • 愛知峰子 (2008) 成瀬誠志作「陽明門」―『うもれ木』との関係―. 中部大学人文学部研究論集, No.20, 118-109.
    書誌ID XC09000083
  • 飛鳥井孝太郎 (1899) 磁器釉下黄色顏料発見の由来. 大日本窯業協会雑誌, 8, No.87, 71-73.
    DOI 10.2109/jcersj1892.8.87_71
  • 長島乙吉・長島弘三 (1960) 日本希元素鉱物. 長島乙吉先生祝賀記念事業会, 京都, 436p.
  • 篠原 守・原 益彦・成瀬 豊 編 (1983) 茄子川焼. 中津川市教育委員会, 119p.
  • 寺内信一 (1899) アスカ井黄につきて. 大日本窯業協会雑誌, 8, No.87, 69-71.
    DOI 10.2109/jcersj1892.8.87_69

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