フェルグソン石―陶芸家・成瀬誠志の黄色釉薬
いずれも砂鉱(漂砂鉱床)から産したフェルグソン石 [Fergusonite-(Y)] です。
もともとはペグマタイトに産する黒色の柱状結晶ですが、結晶面が磨滅して丸みを帯び、表面が白っぽくなっています。
かつては貴重な黄色釉薬(焼き物の絵付け用絵具)の原料として利用されました。発色には、成分中のニオブ(Nb)が関係していると考えられます。
陶芸家・成瀬誠志と黄色釉薬
成瀬誠志(本名 和六:1845~1923)は、中津川市茄子川の生まれの陶芸家です。
東京で江戸薩摩と呼ばれる絵付け陶器の制作で名を上げますが、1886(明治19)年、郷里・茄子川に戻って「陶博園」という工房を開き、ここで数多くの作品を制作しました。
誠志は、陶作のみならず製法や陶土・釉薬等の研究にも熱心で、特に1894(明治27)年ころ、苗木産のフェルグソン石から創りだした黄色釉薬は「誠志色」と呼ばれて賞賛されました。
1899年の大日本窯業協会雑誌に、「アスカイ黄」と命名された黄色釉薬についての記事が掲載されています。1896(明治29)年に恵那郡高山(現・中津川市高山)産のフェルグソン石から黄色顔料を見出したというものですが、これも「誠志色」と同じものと考えられます。
参考図書
文献
- 愛知峰子 (2008) 樋口一葉と万国博覧会―『うもれ木』と「陽明門」―. 中部大学人文学部研究論集, No.19, 224-216.
書誌ID XC17100309 - 愛知峰子 (2008) 成瀬誠志作「陽明門」―『うもれ木』との関係―. 中部大学人文学部研究論集, No.20, 118-109.
書誌ID XC09000083 - 飛鳥井孝太郎 (1899) 磁器釉下黄色顏料発見の由来. 大日本窯業協会雑誌, 8, No.87, 71-73.
DOI 10.2109/jcersj1892.8.87_71 - 長島乙吉・長島弘三 (1960) 日本希元素鉱物. 長島乙吉先生祝賀記念事業会, 京都, 436p.
- 篠原 守・原 益彦・成瀬 豊 編 (1983) 茄子川焼. 中津川市教育委員会, 119p.
- 寺内信一 (1899) アスカ井黄につきて. 大日本窯業協会雑誌, 8, No.87, 69-71.
DOI 10.2109/jcersj1892.8.87_69
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更新日:2023年08月29日