作品紹介「山雲」

更新日:2024年01月06日

山雲(東山魁夷)

山雲(新復刻画 34.3×76.5cm)
本画 (1975):紙本彩色 311.0×66.7cm

唐招提寺御影堂襖絵「山雲」

奈良県・唐招提寺御影堂みえいどうの上段の間にある襖絵「山雲」は、同時期に描かれた宸殿しんでんの間の「濤声とうせい」とともに、1975年、日本画家の東山魁夷によって完成されました。

唐招提寺は、五度の渡航失敗の果てに盲目となり、六度目にしてようやく日本へたどり着いた唐の高僧・鑑真和上かんじんわじょうが、759年に創建した律宗りっしゅうの総本山であり、魁夷は1970年にその御影堂障壁画の制作を依頼されています。
この「山雲」制作のために初夏から山へと向かい、黒部渓谷、飛騨から上高地、御母衣みぼろダムから天生あもう峠、さらには蔵王・三階ノ滝、日光・霧降滝きりふりのたきなど日本各地の山々を訪れ、数多くのスケッチを残しました。特に白川郷近くの天生峠で出会った景色に強い啓示を受けた魁夷は「山肌を這い上る雲烟うんえんによる千変万化の姿と、近景の樹葉の濃淡の彩り、幽玄な景趣に、私は思わず息を呑んだ」と語っており、これらの取材をもとに障壁画を描き上げました。

群青と緑青ろくしょうの岩絵具を適度に焼いて生成した渋みのある色を薄い調子で何度も塗り重ね、段々に濃くしてゆくことにより水墨画に近い精神性の深い世界を再現しています。ここには、度重なる苦難の末に日本へ戒律を伝えた鑑真和上の魂の安寧を祈るため、実際には見ることのなかった日本の風景を捧げようという画家の思いが込められています。

中津川市東山魁夷心の旅路館

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