画伯からのメッセージ

更新日:2021年04月01日

木曽へのメッセージ

東山魁夷

美術学校へ入って最初の夏休みに友人と共に、木曽川沿いに八日間のテント旅行をしながら、御嶽に登ったのが、私を山国へ結びつける第一歩でした。

この旅の途中、山口村(現在の中津川市山口)の賤母しずもの山林で大夕立に遇い、麻生あそうの村はずれの農家に駆け込んで、一夜の宿を求めました。そこで私は思いがけないほどの温かいもてなしを受けたのです。

この旅で、それ迄に知らなかった木曽の人たちの素朴な生活と、山岳をめぐる雄大な自然に心を打たれ、やがて風景画家への道を歩む決意をしました。

それは画家を志した頃の緊張した気持、一つ一つ積み重ねてゆく意志的な努力と言ったもの、その象徴が北国の姿だったのです。このことが少年期を過ぎ青年になったばかりの私には、大きな人生の開眼であり自然の発見でもありました。

その後は何かに取り憑かれたように信州各地の山野や湖、そして高原へと旅を重ねて、四季折々の風景を描き続けてきました。

この緑濃い賤母の森蔭に「心の旅路館」と名付けた私の版画による展示館が設立されたのも、木曽路と私を結ぶえにしの糸がだんだん大きく太くなった結果かもしれません。この地を過ぎる旅の人達にとって、暫しの安らぎと憩いの場になれば、誠に幸いに思います。

(1995年8月)

石碑「歩み入る者にやすらぎを 去り行く人にしあわせを」

中津川市東山魁夷心の旅路館

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