No.2 阿木の藍染作家

更新日:2021年05月07日

中津川市阿木で藍染作家として活動されている戸塚みきさん。
栃木県の日下田藍染工房で修業後、中津川市で独立。
日本で藍染めをされる方はたくさんいらっしゃいますが、戸塚さんのように栽培から行う方は、数少ないそうです。
種まきから染めまでを体験できるワークショップには、近隣の方をはじめ、東京や静岡などからも参加者が集まります。
戸塚さんの染める藍は、鮮やかで美しいのはもちろん、あたたかみを感じられます。

藍の自然の色に惹かれ、藍と共に生きる戸塚さんからお聞きした内容を聞き書き風にまとめました。

戸塚さんと作品

戸塚みきです。東京生まれで、結婚してから夫の実家がある中津川市に来ました。東京芸術大学の油絵科を卒業しています。大学在学中に、大学のゴミ捨て場に作品にならなかった素材や、材料が山のように捨てられていたのを見て、ものづくりの在り方を真剣に考え始めました。
藍染めは、自然の色の美しさや昔の人たちの日々の営みのなかで育まれてきたもので、日本の色の文化に強く惹かれて始めました。
藍は栽培からやりたくて、それも無農薬でやりたかったので、有機農法をやっている農家の方に教わったりして、1つ1つ組み合わせて、10年くらいかけて勉強して積み上げてきた感じです。
藍染め自体は20年前くらいから行ってます。

 

  • 中津川(阿木)に住んで

こっちに来た時に一番驚いたのが川のキレイさ。びっくりしました。川ってこんなにきれいなの!魚もいるじゃないですか、そんなのありえないですよ(笑)。緑豊かで、お米もお野菜もおいしいし、なんて贅沢なんだろうって。
こっちの方たちってみなさん、親切で優しいですよね。優しい方ばかりですごくありがたいです。
中津川の若い子たちが、地元が好きって言えることは、本当にいいと思います。やはりこの水の美しさ、自然の美しさ、中津川素敵だなって思える文化がある。そこはこの街でよかったなって思います。昔ながらの土地の力がどれだけあるかっていうことに興味があるので、地元が好きだからここにいたいって思う街って素敵だなって思います。

しずく地藍工房
  • 藍の栽培、染めの作業

藍を栽培するために、いろんなものを混ぜて堆肥を作ってます。やっぱり有機でやりたかったので、堆肥の勉強をして。牛糞ベースですけど、鶏糞、もみ殻、藍で使った灰や茎、家の生ごみ、落ち葉とか。2.5トンの堆肥を3月ぐらいに仕込んでます。

収穫は、8月から9月。ちょうど葉っぱが生い茂ってるときに刈り取って、その青々とした色をいただく。刈り取りは手刈りですね。たまに草刈り機使いますけど、やっぱり草刈り機だとなかなかうまく刈れないので、手刈りのほうがきれいに採れますね。刈り取った葉っぱは、家の前に全部広げて干すんですよ。その作業が一番大変です。

キレイな藍(アオ)を得るには、葉っぱを乾燥させることがすごく重要なんですよ。カラッときれいに仕上げるのは難しいです。テクニックよりも忍耐と努力の方が大切ですね。

 

  • 藍染めの魅力

藍染めの成り立ちってすごく特徴的なんですね。他の草木染めだと、草木を採取して煮て色を出したりするんですけれども、藍染めだけが発酵の過程を辿るので、なんか不思議さというか。一番感動したのは、あの草からこんなにきれいな青色が染まるんだということ。衝撃的でした。始めた当初からずっと今でも感動しますね。

こういう自然の素材を扱っていると、逆に自分が合わせなきゃいけない。自然環境だったり、藍の状態を見ながら、自分は今日これくらい染めたらいいかなとか、今日だったらこの素材がいいかなとか、そんなふうにまず自然が主体にあって、そこに人間が合わせていく。そこに非常に魅力を感じました。どれだけ自然の予想外のできごとに対応していくかっていうのが、結局モノになっていく、結果になっていく、カタチになっていくということだと思います。

土から始まって、土にかえる藍染めを非常に重要視しています。何も捨てるものがないところが魅力なんですよね。モノがどうやって生まれて、どうやって還っていくのかっていうのは、ヒトがどうやって生きていくかにつながっていると思いますので、それを伝えていくということでワークショップをやっていますし、その姿勢を貫くこともすごく重要なことだと思っています。

手ぬぐいを藍液に漬ける戸塚さん
水で洗った手ぬぐい

 

  • 藍染めから染み出る生き方

自然農法と藍染めに共通するところは、営みを大切にするというところ。自然の営みに沿って生きるというところでしょうかね。もっと機械を使って楽をして色を安定化させて、商品化させることもできると言う人もいるけど、じゃあ自分ができるかって言われたら、やっぱりこういう生き方しかできない。

多様性とか持続性とか最近よく言われますけども、それは絶対的に重要ですよね。やり方なり、買うもの、自分の生き方、それぞれが意識を持ってただ選べばいいと思うんですよ。その未来に向かってやはり水を汚さず、土を汚さず、多様性を重要視し、いろんな人がいていろんな生き方があって、でもこの豊かな地球で生きていくことを末永く続けるにはどうしたらいいんだろうかっていうことを考えながら、それぞれのライフスタイルをやっていけばいんじゃないかな。やるべきことをやっていけばいいんじゃないかなって思います。

もっといろんな人がいていいんじゃないかなって。やり方なり生き方なり、どれが正しいなんかなくて、生きていくにあたって、何をその人が見つめているかだと思うんですよね。そこが一番重要なんじゃないかなって。だから都会で暮らそうが田舎で暮らそうが、みんな一緒だと思うんですよ。世界のどこで暮らそうが、つながってるから。そう思います。

 

畑と工房を見学させていただき、藍の栽培から染めまでの工程を教えていただきました。

・近所の農家の畑をお借りして、藍を有機栽培しています。
・春に種をまいて、夏に収穫。収穫した葉を天日干しします。
・寝床という小屋で、乾燥させた藍の葉に水をかけることで発酵させ、藍の染料となる蒅(スクモ)を作ります。
・藍を染める小屋には、直径80センチ程の陶器の甕(カメ)が4本あり、甕(カメ)の中の液温は20~25℃に保ちます。
・1日の終わりには、菌を活性化させるために甕(カメ)の底からしっかりかき混ぜます。泡を集めてできるのが「藍の華」。
・液に5分漬け、5分空気にさらします。その繰り返しで濃い色が染まり、水で洗うと灰汁が取れて青い色になります。

藍を育てる畑

藍を育てる畑

蒅と藍の葉

蒅(スクモ)と藍の葉

陶器の甕

藍を染める小屋にある陶器の甕(カメ)

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